日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

6.10年の月日(ジャドール)

新宿の喫茶店で人と会った。

喫茶店に入る前も、伊勢丹で香水を眺めていた。
出かける時に付けたティンタ・ロハも都会の寒い風に当たってすっかり消えかけてしまっていた。

相変わらず賑わうディオールの前を通ると、ジャドールシリーズが目に入った。
ジャドールは、思い返せば生まれて初めて付けた香水だった。私が高校生の頃、従姉妹のお姉さんがそれを愛用していたのであった。
お姉さんは美人だった。性格も良かった。彼氏もいた。無論憧れの女性であった。

そのお姉さんが、ある時私のコートにジャドールを付けてくれた事があった。
手首首筋だけでなく、冬はコートに香りをつければ翻った時に良い香りを漂わせられるのだと教えてくれた。
しかし東京にもろくに出た事の無い16、17の小娘にディオールの香りが理解出来るはずもなく、コートから中々取れないジャドールの香りに当てられてしまったのを覚えている。

聞くと、今回試したジャドールはどうやら昔のジャドールにアレンジを加えたものらしい。
10年経つと香りも変わるのだなと思った。

試香の感想は以下。


ジャドール オードゥ パルファン
→付けたての時は一度に甘く瑞々しい花の香りが広がってゆき、徐々に甘さは落ち着き香りがはっきりとして来る。最後の方になると、鼻に抜けるようなバニラにも似た花の香り(これがイランイランなのだろうか)の奥に微かにパウダリーで嗅ぎ分けられないミステリアスな香りが潜んでいる様に感じた。
大人の色気と気品、誇りを彷彿とさせる。甘いのにも関わらずクールさが印象的だった。




喫茶店ではその人と他愛ない話をして、その後イルミネーションを見に行った。普段見過ごしているイルミネーションも誰かと見るといつもいる世界とは違う世界のようで楽しかった。
そして無数の光の点に包まれた道を進んだ終点で、彼から交際を申し込まれた。
しかし、どうしても受け入れる事が出来なかった。
多分それは全て私に責任があった。
 

その後何を喋って別れたのかは覚えていない。
夢の中の様な目眩から覚めたら帰りの電車に揺られていた。
腕を上げたら、嗅ぎ慣れない香りがした。
 昔とは違う新しい香りのはずなのに、ジャドールの残り香は10年前と同じようにコートに残り続け、私も10年前と同じように酔ってしまった。




ディオール  ジャドール オードゥパルファン