polar night bird

香りの記録

42.朝と夜(グラン ソワール 他)

休みの日に、冬服を買うついでに香水を見て回ろうと新宿に寄った。

新宿に寄ること自体久しぶりで、東口から外に出ると前より少し空気がきれいになったかと感じたが、歩いて5分としないうちにそれは気のせいだったと分かった。

 

伊勢丹に行くと、フランシス・クルジャンの新作が目に留った。

クルジャンも朝と夜というミラーハリスの光と影に似たテーマの新作を発表すると聞いて興味を持っていたのだが、すっかり忘れていた。 

所感は以下。

 

 

プティ マタン(Petit Matin)

→トップからレモンが目立って香る。柑橘系の香りを先頭にリツェアクベバ(レモングラス的な香りらしい)やラベンダー、ローズマリーなどのさわやかなハーブ系の香りを感じ、ラストにはムスクとアンバーと、軽やかで影を全く感じさせない。そのためルトゥージアやDRハリスなどの、伝統的な製法のコロンを彷彿とさせるノートになっている。終始雰囲気は変わらずだが、他の柑橘系コロンと比べてトップからややグリーンの香りと柑橘系の苦みが現代的でややはっきりしているため、これもメンズ香水のイメージを受けた。ラストになると日が高い位置に昇る様にネロリのパウダリー感を感じるオレンジの香りが香り始めて花の甘さがやや増す。オーデパルファンらしいがコロンのように瑞々しく全く癖がない香りのため、付ける場所を選ばないだろうと思う。

 

 

 

グラン ソワール(Grand Soir)

→インセンスが入っているため、ラストまでパウダリーな調子が続くが、レディース香水ではなくユニセックス~メンズの傾向の香り。バニラと安息香を主軸にトンカビーンがトップから香るので、やはり濃厚ではあるが女性的な香り立ち方ではない。嗅いだことのないシスタスラブダナムが入っているのだが、乾いた香りの中にふと感じる鼻に抜けるような瑞々しい香りがそうなのだろうか。主軸となっている素材の甘さのバリエーションがとにかく豊か。ムエットではシスタスラブダナムの香りと安息香が相俟ってメンズ香水のイメージが強い香りに感じるが、肌に乗せると甘みが抑えられ、時が経つにつれて更にインセンスのきめ細かい粉のような滑らかさが目立った漂うような香りになった。

パリの夕べをイメージした香りだそうで、他の夜をテーマにした香水と同じように深さと濃厚さに向いている部類。しかし誰かと過ごす濃密な深夜と言うよりは日の暮れ行く都会の街並みを宛もなく一人縫い歩いて行くメージ。

 

 

 

 

 

クルジャンの香水全般に感じるのだが、この2本もユニセックスであるがどこか男性的な香りだった。

 

香りを振り返ると、先に述べたようにプティ マタンの調合が初期コロンにとてもよく似ている所が気になった。

もし意図的に調合を引用しているのだとすれば、グランソワールはどの様な位置付けにあるのだろうか。

そして、そのグランソワールが深夜のイメージではなかった点も興味深かった。

 柑橘系のシンプルなレシピのケルンの水から始まった香水は、500年を経た今漸く混沌の夜に突入して行くのだろうか。

その壮大な夜の始まりの先には、どんな夜明けが待っているのだろうか。

 難しい話はここではやめようと思う。

 

 

 

 クルジャンの洗練された香りを吟味しつつカウンターを見ると、サロンドパルファンのカタログが目に入った。

そのイベントリストを見ながら外に出ると、新宿も日が暮れかけていた。

新宿ではパリの夕暮れのように格好は付けられないが、1人で気ままに宛てもなく歩きたい時は丁度いい。

 

両手で各々の香水を試香したのだが、体質的に右手のグランソワールの香りが強く香っていた。

今日ばかりはコートのポケットに手を入れる癖をやめて、少し花園神社の辺りまで散歩をして帰った。

 

 

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メゾン フランシスクルジャン

Maison Francis Kurkdjian