フェギア1833にてエロヒオ デ ラ ソンブラを購入した。
(エロヒオ デ ラ ソンブラに関する記事はこちら28.蜃気楼(エロヒオ デ ラ ソンブラ ) - 日々の糧—香り日記—)
というのも、来月は私の誕生日なのだがその前後が仕事で慌ただしいため、前倒しで購入を決めたのであった。
フェギア1833には暫く行っていなかったので、今回訪れた時に価格やデザインが変わっていたことを初めて知った。
リニューアル後のボトルデザインは、手書きのラベルではなくボトルに直接プリントが施され、裏側を見ると主な調香がわかる仕様になっていた。新しいデザインもクールで素敵だった。
しかし、ボトルデザインと価格だけに留まらず、よりによって購入を悩んでいたエロヒオ デ ラ ソンブラとアルギィン スエニャの調香までもがリニューアルされていた。
ショックだった。
新しい調香はどちらもフルーティーな部分が強化され、より流行に近付いた人当たりの良い香りになっていたが、やはり私は前の独特の癖のある調香のものが忘れられなかった。
店員さんに尋ねると前のタイプの在庫を調べてくれて、エロヒオデラソンブラの30mlは一本だけ在庫があったのでそれを手に入れた。
他にも何種類か新作が陳列されており、それらに関してはまた後ほど感想を書きたいが、ミルクを使用したフェギアらしい甘さの面白い香りのものが興味深く印象に残っている。
会計の際にヤケーンヌのテスターの1mlボトルを貰った。
この新作はグリーンが主役の様で、アルギィエンスエニャが好きならきっと気にいるはずだと勧めてくれた。
所感は以下。
ヤケーンヌ(yakeń)
→トップはパチュリ寄りの渋みのあるグリーンの香りに同じ様に青さの強いベリーの香りが相俟ってメンズ寄りの香り立ち。青みはあるが瑞々しいと言うよりはウッドも感じるドライさ。
店員さんが「肌に付けるともっとフルーティーに香りますよ」と教えてくれた通り、私の肌ではトップ以降どんどんとグリーンの深みが中心に凝縮してゆく様に深まってゆき、その奥からカシスのようなフルーティーで濃い甘い香りが姿を現した。アルギィエンスエニャのミドルと似た様な香り方だが、甘さはカシスの様でいてミルクの様な滑らかさもあり、ラストにはアンバーも加わりより優しくふっくらと丸みがある。ラストはトップのような芯のあるドライなグリーンというより秋の半ばに感じる緑の香りの様な静かなグリーンに落ち着く。
ヤケーンヌとは、現地の人々が薬草にしていたパラメラというマメ科の花らしい。パラメラがどんな香りかは分からないが、確かにトップのグリーンには薬草の様に鼻に抜ける部分があると感じた。
私はこのヤケーンヌがすぐに好きになった。
エロヒオ デ ラ ソンブラも併せて、フェギア1833のグリーンは格別だと改めて思った。
ジュリアン・デベルはパタゴニアや南米に分布する数々の植物を香料に採用している。
パタゴニア地方の、殊にアルゼンチン側の気候は厳しいと聞く。不毛の大地、荒涼とした風、険しい山脈、そしてそこに息づく力強いパンパや薬草の数々。
実際にパタゴニアには行った事はないが、香水に溶け込んだ百以上の草花の香りを通して、彼らが生きていた人知を超えた深い混沌と孤独を内包した大自然の気配が心を揺さぶるのだ。
家に帰ったら早速エロヒオデラソンブラをベッドにプッシュして寝転がった。
その地球の反対側の柔らかい草の香りに包まれたら、どこか遠くの生まれ故郷に行って帰って来たような、胸が一杯なのに少しだけ途方に暮れた気分になった。
フェギア1833