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日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

46.サロン ド パルファン②(ローズ バルバル 他)

ゲラン ミヤ シンマ

続きをまとめるのが遅くなってしまったが、サロンドパルファンの会場は、23日と27日に巡った。

様々なブランドがやや天井の低い空間に一堂に集まり、1階のカフェ デ パルファムとはまた違った濃密感があった。

 

 両日ともローズについて考えて続けていたため、もう少し探検してみようと試香はローズに絞ってブースを巡っていた。

しかし、だいたいの香水にはローズが入っており、大抵どこのブランドでもローズを扱っている。

パルファンロジーヌパリというローズの専門ブランドもある。

あまりにも代表的な香りだからこそ、自分の鼻に合うローズの香りに出会うのは難しかった。

 

そんな中、23日にゲランのローズに出会った。

 

ゲラン

ローズ バルバル(ROSE BARBARE)

→「野蛮なローズ」という意味。

トップはピーチとパチュリが良い意味でローズに毒気を纏わせている。

パチュリのえぐみのあるスモーキーで深いグリーンの香りはトップが1番強く、だんだんと落ち着いて行く。店員さんがグロッシーと形容していたピーチはラストまで完熟した様なとろりとした甘さを保ったまま香った。私の肌だとピーチが入るとそこが妙に主張して香るのだが、これに関しては浮き足立つ事はなく沈着さを漂わせていた。調べるとミドルにオトマンローズと共に甘みと苦みのあるフェヌグリーフが配置されている。ピリッとした刺激的なスパイシーさではなく、冷たさのあるスパイス感がフルーティーな香りを引き締めてローズの香りを目立たせている。色で言えば黒に近い、深く落ちて行ける香り。

クルジャンやクリードなどに見られるガーデン系ローズの丸みや優しさではなく名前の通り野蛮なまでに生を強く香らせている深緑の中に茂るバラのイメージを受けた。男性でも充分に纏える。

 

これもクルジャンの調香だというのだから、今日のローズの香水はどうなっているのかと思う。

この他にもローズ ナクレ デュ デゼールも試香した。

これは覚えきれなかったので簡単な所感を。

 

ローズ ナクレ デュ デゼール(Rose Nacree du Desert)

ペルシャローズの香り。バラらしい優しいパウダリーさはあるものの、トップからウードが感じられる。他にもミドルにサフランやウコン、シダーなどの甘さが抑えられたウッド系の香りが配置されており、ローズといってもガーデン的な甘くボタニカルなものではなく、鼻に抜ける冷たい土のような香りがするところが面白かった。

砂漠のバラをイメージした香りだそうだが、太陽の下の灼熱の砂漠というよりは、静かで寒冷な砂漠の夜をイメージできた。ラストに近づくにつれて、ローズが石鹸のような清潔さを感じさせるパウダリーな香りとなり、砂のように消えてゆく。

 

 

どちらかというとローズ ナクレ デュ デゼールの方が好みであったが、どちらもヨーロッパから離れたオリエンタルなローズを彷彿とさせていたところが印象的だった。

 

 

 オリエンタルつながりで、27日はミヤ・シンマのブースを覗きに行った。パリで展開している日本人の調香師のブランドということで気になっていた。

 

この日はミヤ・シンマのブースの向かいのパルファン・ロジーヌ・パリのブースにマリー・エレーヌ・ロジョン氏が来ており、関係のない一般市民でありながらとても緊張してしまった。

緊張しながら試香した中では、TSUKIという香水が一番印象に残った。

 

 

ミヤ・シンマ

TSUKI(La lune)

→トップからベリーの香りとグリーンが香る。

ベリーはラズベリーだが、竹のハーブのように鼻に通る香りが相俟って日本の木の実の香りを彷彿とさせる。いつかの夜に出会ったコムラサキの香りに似ていた。それと同じくヘリオトロープジャスミンの香りもトップから感じるのだが、パウダリーで甘い王道の香りというよりは、植物の緑の筋を感じる、独特の癖のある甘い香り。ラストに向けてバニラの滑らかな甘みとラズベリーの香りが強まってゆくが、煮詰まるような濃さではなく、最後まで香りの潤いは失わない。

ミヤ・シンマの香水全般に感じたのだが、とにかくひんやりとした水感が特徴的だった。香りが完全に混ざり合って出来ている水や、弾ける水の球や、川のように一本に流れる水というより、盆に汲んだ澄んだ清水に木の実や草花を浮かべたような、清廉で透明な瑞々しさがある。

百人一首素性法師の句をモチーフにしており、そのテーマが夜に思い人に馳せる想いだからか、瑞々しくも香り立ちはしっかりしており甘美で濃厚な夜を彷彿とさせる。

何人か言及しているが、欧米の文法に則って日本の繊細さが表現されているイメージ。 

フランスではその日本的な繊細さが評価されているそうだ。 

 

 

 

全体的に、今回のサロンドパルファンでは、最近のボタニカルな傾向のものより甘い香りのものが印象に残った。その数も多かったのではないだろうか。

 

話は少し逸れるが、今日(あるいは昔からなの分からない)の「夜」や「闇」といったイメージを使用した香水には、例えばベリーとカシスの組み合わせやバニラ、インセンスや沈香の甘みといった不透明な濃厚さが付いて回っている。文化の違いがそうさせているのだろうか。

ミラーハリスのエチュイノワール、ヴィトンのマティエール・ノワール、クルジャンのグラン・ソワール、フェギアのアルギィエン・スエニャ、そしてミヤ・シンマのTSUKIも、どれも違った調香の魅力があるが、総じて時間が経つにつれて内に落ちてゆくように濃厚さを深めてゆく。

だからなのか、夜をモチーフにしていない香水ではあるものの、ローズ ナクレ デュ デゼールの砂漠の夜のような香りを聞いた時、一瞬嬉しくなったのを覚えている。

 

 

伊勢丹を出てすっかり暮れた外の空気を吸い込んだ時、冷えた空気に試香したたくさんの香りたちが解放されたように香った。

鼻に滲みる寒さの中で離れて行く香りを感じていたら、濃密に香りが集まるサロンドパルファンも、そこにあったとろけるような香りたちも、すでに遠い昔の記憶のように思えてきた。

 

 

 

Rose Barbare - Guerlain

ローズ ナクレ デュ デゼールはの情報は手に入れられなかった。

 

miyashinma.fr