polar night bird

香りの記録

47.思い出す事(ダンシング オン ザ ムーン )

唯一の休日の日曜日が勤務で潰れた怒涛の二週間が終わり、ようやく日曜日に時間が出来た。

 

この日は夕方から用事があり、その間の時間を使って伊勢丹へ向かった。

伊勢丹はサロンドパルファン以来だ。

マルタンマルジェラでレプリカの新作が出たと聞いていたので、それが気になっていた。

新作は4種類あったが、その中でダンシングオンザムーンに目が行った。 

今年の冬はなぜか「夜」や「月」といった香りが気になってしまう。

 所感は以下。

 

ダンシング オン ザ ムーン(DANCING ON THE MOON)

→バニラ、チュベローズ、ジャスミン系の甘い香り。トップではムーンフラワーが香り、それがやや甘酸っぱさを付与している。

店頭では悲しいことに「一番人気」「女性らしい」というフレーズで勧められたが、公式サイトでは表現に「クリーンで無機質」というワードが見られる。こちらのほうがしっくり来る。

調香は先述通り、ベーシックな「夜の香り」の記号に満ちている。それによって濃厚な温かみはある程度あるのだが、他の似た傾向の香りに比べてややドライさがある。かといって粒子感が強い訳ではない。滑らかで甘く瑞々しい香りの中央にやや異質なアルデヒド系のクールな香りを感じて、それより先に感情が進むのを阻まれた気がした。それらがかえって肌から少し浮いているような距離を感じさせて無機質さ・真空感を覚えた。シングルノートなのだろうか。

纏うことを考えたときには、クセもないのでこれからの時期は男女問わず纏いやすい香りだと思う。

 

 

他の新作も試してみたが、共通して調香自体は極めて現代的で、特徴を掴みにくい程に流行を押さえたものであったものの、不思議な距離感と無機質感を覚えるものばかりだった。

次に気になったのはアクロス サンズだった。

タバコの葉の香りとインセンス寄りのまさに砂のようなドライな香り。タバコ系の香りは良くも悪くも内によどみがちだが、これはタバコの香りがシャープで澄んでいる印象。(機会があったら改めて所感を残したい)

 

何かの記事でレプリカは記憶や深層心理を呼び覚ますコレクションだと読んだ。

新作は、何の記憶のレプリカなのだろう。勉強不足ゆえに今ここで答えに到着はできないだろうが、

月でのダンス、空を飛ぶこと、深い森の神話、砂漠への逃避。現在の記憶を超越したテーマを持ったそれらは、今から少しだけ未来の記憶と私たちの中に眠る懐古的な記憶を結びつけてゆくようなイメージの香りだった。

 

 

世間はクリスマスムードで、伊勢丹もいつも以上の人で賑わっていた。

私が世の中のイベントに心を躍らせることがなくなったのはいつからだっただろうかと考えながら暫く館内を巡っていたが、答えは出ないままだった。

その記憶を遡って懐かしく思うには、まだまだ経験と時間が必要なのだろう。

 

 

帰りに紀伊国屋書店で本を買って帰った。

 

 

Replica Eau de Parfum | Maison Margiela