日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

54.チョコレートの濃い香り(ダークアンバー&ジンジャーリリー 他)

ブログの更新を行えないまま バレンタインデーが過ぎた。

今年は大好きなリトアニアのチョコレートナイーブをたくさん買おうと張り切ってサロン デュ ショコラを訪れたものの、そこで自分はチョコレートの香り、正確にはチョコレートと砂糖が混ざりあったあの出来たての甘くて温かい香りが実は苦手なのだと気付いてしまった。(食べることはできるのだが…)

 

チョコレートの甘い香りと溢れかえる人々の肌の香りをたくさん吸い込んでしまった後、鼻と胃と精神がすっかり疲れてしまい、チョコレートの香りとそのときの具合の悪さがトラウマのように頭に染み付いてしまっていた。

そのためしばらく香りから距離を置いていたのだった。

 

 

 

バレンタインデーを直前に控えた日曜日、友人と香水を見に新宿を訪れた。

彼女は数ある香りの中からどうやらローズの香りに惹かれたようで、一緒にローズの香りを聞いていたら少しだけ心が華やかになった。

 

しかしまだ、香り、殊に甘い香りに対して恐怖に似た気分が続いていた。

重く甘いバニラの香りに当たってしまったら、もう歩いて帰る気力がなくなるに違いない。そればり考えており、そのため、やはり手が伸びるのはクリーンやイッセイミヤケのような清潔系の香りばかりだった。

 

 

友人と別れた後、再び伊勢丹に戻ってジョー マローンを訪れた。

あの癖のない、瑞々しいガーデンのような香りがこの疲れから救いをもたらしてくれるのではないかと思ったからだった。

 

そこで出会った香りの所感は以下。

 

ダークアンバー&ジンジャーリリー (DARK AMBER&GINGER LILY)

トップは意外と爽やかで、ダークアンバーの濃厚になりがちな香りは強すぎず、変な甘さもなく低調で落ち着いた香りが持続した。ジンジャーリリーの香りなのか、名前のようにジンジャーエールのような瑞々しさと清涼感がある。

トップを過ぎると時間と共に甘さが強まり出す。サンダルウッド系の甘さだと思ったが、従来のそれよりは幾分か滑らかさの部分があっさりとしている。伽羅が入っていると店員さんが教えてくれた。その店員さんはこの香水を「日本の香り」と評していた。トップの奥に感じる研ぎ澄まされたダーク。涼しさはこの伽羅のためだろう。

ミドル以降は伽羅やパチュリ的な暗めの色が目立ちメンズ寄りの香りになるが、男女問わずに纏えると思う。

深い香りのタイプではあるが、ジンジャーリリーの 水気を伴う繊維感がトップの香りを広げてくれているので纏いやすい。

 

ブラックベリー&ベイ(BRACK BERRY &BAY)

→ベリー系というと、甘酸っぱい香りが時に濃すぎるように感じることがあるが、これに関しては全くそのような心配はなかった。トップのブラックベリーは瑞々しさと共に流れるように香り始める。ミヤシンマのように、清流の中に浮かぶ木の実にような透明感と立体感がある。

他にはフローラル(赤いスパイシーなものではなく、パンジーやすずらんのような、瑞々しい香りに合った優しい類のものだと感じる)グレープフルーツやシダー、サンダルウッドなども含まれてはいるが、そのどれもが変に主張がない。それはベイリーフを始めとしたグリーンの瑞々しさが、潤いのある水のような香りの中でそれらをまとめている印象がある。あくまで主役はブラックベリーで、グリーンの織りなす香りはベリーのフレッシュさが流れの中で散漫にならないよう支えるように香る。

時間の流れとともにやはりベリーが強まってくるが、トップのフレッシュさはしばらく続いたので嬉しかった。

 

 

ジョーマローンの香りは期待通り、ストレスなく香りのリハビリができた。

お陰で、チョコレートの甘い砂糖の香りへの嫌な思い出は少しずつ忘れてゆけば良いと思えてきたのだった。

 

 

その帰り道、ふと冷えた夜気の中に滑らかな花の香りがしたので顔を上げたら、桃の花が咲いていた。

もう春が来ている。

桃の花の蜜と花粉の混ざりあった甘い香りはいとも簡単に鼻の奥を通り過ぎていった。

 

 

 

 

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