日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

65.花とスパイス(サント インシエンソ/グッチ ブロッサム)

ついに先日、惚れ込んでしまった香水を取り寄せる事にした。

香り自体はもちろん、ボトルデザイン、モチーフ、コンセプトに至るまでぴったり気に入った香りは珍しい。

その香水の購入を決めるまで、何度もそれと同じグリーン系統の香りを聞いて歩いては香りの記憶の面影を見出そうとしたり、何度もサイトの解説を和訳したりしていた。

 もはや恋なのだった。

 

しかしあとはあちらがやって来るのを待つばかりなので、しばらく執着していたグリーンから意識的に離れて新作の華やかな香水を試香しようと新宿伊勢丹に立ち寄った。

(銀座はいつでも行けるようになったからかむしろ足が遠のいてしまった。)

 

そこで、ディファレントカンパニーとグッチの新作と出会った。

 

 

サント インシエンソ(santo incienso)

インカ民族に尊ばれてきた香木、パロサントをテーマにした香りらしい。 トップからスパイシーな香りが全面に広がる。トップの調香はプチグレン、ベルガモットナツメグなのだが、プチグレンとベルガモットは終始爽やかで甘さがほとんど無く、スパイスの弾ける後ろで清浄なフィールドを作り出している。香木を燻した香りを表現しているらしいが、トップのナツメグを始めとした乾いたスパイスはまさに静かに燻る香の内部の火ように、明滅を繰り返すような香り方をしていたのが印象的だった。ミドルにはパロサントアコードにセダー、ヘリオトロープとウッド系の配置がされている。トップから比べるとミドルからは抽象度が増し、肌との距離が近くなってくる。ヘリオトロープなどのすっきりとした花の香りがパウダリーに肌へ着地し、明滅を繰り返していたスパイシーな香りはウッドと混ざり合い煙のように漂い始める。ラストにあるインセンスやミルラの姿は初めから認識出来るものの、やはりミドル以降から改めて感じることが出来る。

といった終始乾いたインセンス系の香りなのだが、濃厚さや煙さなどとは一線を隔したスモーキーながら筋の通った神聖な香りになっている。その香りが徐々に体へと降り注ぎ、やがて自分と一体化する。

パルファムは宗教儀式で焚かれる香が語源となっている。この現代で香水の起源へと立ち返り、退魔の香りとして信じられて来た魔法の木であるパロサントのインセンスの香りを纏うのは、一種のラグジュアリーと言えるのかもしれないと感じた。

 

 

グッチ ブロッサム(GUCCI BROSSAM)

→香水界では初めて使われる南インド産のラングーンクリーパーが含まれている。

他には主にジャスミンとチュベローズといった、ファーストインプレッションは四方八方が白い花で構成された王道の香りなのだが、中央で主張して広がる役を担いがちの普段は甘く濃厚なジャスミンとチュベローズが、この香りでは青みだったり筋であったり全体的な花の立体感も構成していることが良く分かる。

ラングーンクリーパーもまたその二者のような白い花系の香りで、この香水ではこの花の香りが中心部に位置し最も華やかさ(記号的な白い花の香り)があるのだが、その香りは若干パウダリーで甘酸っぱさがあるように感じる。その差異を発見できるのも楽しかった。ジャスミンとチュベローズの特徴的なえぐみは鋭くはなく、角の無い花のきめ細やかな香りが瑞々しく、とろけるように包み込む一方で、花の繊維感や完熟していない青さも奥で香るため、ある程度深く吸い込み吟味できる香りになっている。

これはボディーローションの方で鮮明に感じたのだが、青みの部分がやや瓜のような果実を思わせる内に円を描く丸みのある香りとなっている所が香りを甘くパウダリーにし過ぎておらず、飛躍できる涼しさのある印象を与えられた。

身近である主役級の3種の花の競演というより共演なので、まるでもう1種の新たな濃厚な香りの花と対峙している気になった。

日頃親しみ聞き慣れた類の香りであっても、庭園の様に様々な角度から注視することで違いが見えてくる。これはこの香りだからこそ感じられる感想だと思った。

 

 

 

 今回試香した香水はどちらも夏には不向きそうな分類でいて、どこかクールさのある香りだったのが何だか救われた。

 

家に帰っていたずらに床に寝そべってみると、花とスパイスの香りが辺りに散らばる様に香った。

目を閉じるといつもの部屋ではないようで、浮ついた気分にさらに華を添えてくれた。

 

恋と旅行は成就するまでの過程が楽しいのだ。

 

 

The Different Company

http://europe.thedifferentcompany.com/index.cfm

 

 

www.gucci.com