日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

68.残暑《オードイタリー(オードイタリー)》

どこの企業でもオフィスの空気が悪い日はしばしばあるのだろう。

この日のオフィスはとにかく息が詰まりそうなくらい空気が険悪だった。

そんな空気から逃れて存分に息を吐こうと仕事が終わったらさっさと銀座方面へ向かった。

 

 やはり仕事終わりの1人散歩は開放的で、薄暗い銀座の通りを口笛を吹きながら暫くさまよった。

 

すると、銀座のプロフミ ディ ギンザにたどり着いた。

以前オードイタリーに出会った店なのだが、改めて来てみるとこんな立地だったのかと不思議な気分になった。

 

今回もオードイタリーのトワレを中心にして試香をさせてもらったのだが、特にこのブランドのシグネチャーモデルであるオードイタリーに前回とはまた違った複雑さを覚えて印象的だった。

 

所感は以下。

 

オードイタリー(EAU D’ITALIE)

→調香を見ると、トップはフランキンセンスベルガモット、ブラックカラント。ベースのグリーンの上で甘みが少ない瑞々しいベルガモットが前面に香る中、バニラのような甘い乳白色の香りがするのはフランキンセンスが由来。この2つの香りにはある程度の硬さを感じる為、シプレタイプの良くも悪くもイタリア系香水的な香り方だと思えた。しかし、ミドルになると様子が変わり始める。

ミドルはマグノリア、アコールアルジル、チュベローズ。このチュベローズは花ではなくミネラルのみを抽出しているのだそう。このやや有機的で滑らかな爽やかさのある花の甘みの伴うミドルの香りと、トップからのフランキンセンスが混ざり合い、海からの風のような爽やかでさりげないマリンの香りに変化するのだ。それに加えてアース系の香りを集めたアコールアルジルと、トップより緑の立体感を持ち始めたグリーンが、トップのどこか堅さのある殻を破り、僅かにふくよかな温かみを感じつつ包み込まれる様にこの香水の懐の深さというか香りの構成の奥を覗いて行けるようになる。その後は、更にベースのグリーンが明確に現れ始め、トップの花の香りからパチュリとシダーウッドの渋みのある深みとクローバー、ハニーのしっとりとした優しい甘さが台頭する。その他にはベースには苔の香りであるライケンが含まれており、やはり苔の透明な清涼感が香りを深くし過ぎず筋を固めていると感じた。

印象的だったのは、ミドルがマリンとグリーンの理想的な出会いを思わせたところだった。このコントラストが、バニラを使っていないのもありベタつかず、苦味のあるレモンを彷彿とさせるシプレの整然とした列の間を軽い調子で漂う様は心地よい。日頃から強すぎるマリンノートにはグリーンをコンバインして使うのだが、この香水は一本でその楽しみを感じられる。

 地中海の暖かさは日本の残暑とはちがうだろう。その暖かくも爽快な風をイメージ出来た。

 

 

今頃の地中海は一番心地良いのかもしれない。

今年の日本の夏は寒いくらいだが、やはり外は蒸していて、日本らしい夏だった。 

 

あたりはもう夜で、夜風も生暖かく海風とは似ても似つかなかったが、オードイタリーの香りが鼻を掠めると少しだけ銀座が広く思えた。

 

 

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