日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

74.反射《1/.2(イストワール ドゥ パルファン)》

前回の記事を書いた後、ウンハイムリッヒを購入した。外に拡散すると言うより肌に染み込み密かに香る様が心地良く、外に出る際は毎日纏っている。

穏やかな日々を過ごしていた。

 

もう外はコートの季節だ。毎年コートを着る際は、肌に乗せているものとは違う香りを内側に吹きかけている。

今年は素肌にはウンハイムリッヒとして、外には何を纏おうか。冬はそれをテーマにして香水探検をして行こうと思っている。

 

さて、休みの日に久々に丸の内を訪れた。

丸の内といえばコンランショップの香水コーナーで、この日も一番にそこに向った。 

すると、イストワール ドゥ パルファンの鮮やかなブルーのボトルが目に入った。

そのThis is not a blue botteleシリーズは、以前のパリ旅行の際に イストワール ドゥ パルファンの店舗で見かけていた。ギャラリー然としたシンプルな白い店内でそのマットな色合いが映えていたのを思い出す。日本に来るかどうか分からないと思っていたシリーズだったので、再会出来てなんとも嬉しくなった。

ちなみにシリーズ名はルネ・マグリットの「これはパイプではない」の引用となっているのだが、このあたりの領域は話すと長くなるので触れないでおこうと思う。

 そのThis is not a blue botteleシリーズは感情の抽象化がテーマの1/.1、プリズムがテーマの1/.2、エネルギーの炎のリングがテーマの1/.3と3本が展開されているのだが、今回は1/.2について所感を残すことにする。

 

1/.2

→トップはアイビー、ピンクペッパー。ミドルはスズラン、ライラック、イランイラン。ベースがサンダルウッド、バニラ、ホワイトムスクとなっている。

爆発とプリズムがテーマらしい。調香の通り基本はクリーミーで甘い香りなのだが、ムエットで感じたその奥に走るアーモンドのような香ばしさのあるドライな調子が心に留まって試香をした。

肌に乗せると、まずはトップのアイビーの淡い瑞々しさと仄かなミドルの花々の香りが水気を帯びた質感で肌に広がる。ピンクペッパーを使うのは今の流行りなのか、そのおかげてトップにふさわしい軽さと引き締まり方をしている。その間もなく、イランイランの香りが奥から湧いてくる。そのあたりから、スズランやライラックの香りの輪郭が見えてくるのだが、それらは実は爆発のような拡散をしているわけではなく、残像を伴って香るような、彗星の尾のような線を描いて辺りを旋回しているように思えた。爆発というと、先に言ったようにドライな粒子感のあるイメージを持っていたので、まずこの質感を覚えたのは新鮮だった。

イランイランは初めは生花寄りのような立体的な香りで現れるが、追従する他の花々の香りや奥に控えるバニラと徐々に円状に混ざり合い、グルマンとも思えるフルーツめいたややパウダリーな甘い香りへと変化する。スズランの緑寄りの甘さ、ライラックのきめの細かいパステルカラーの甘さもまた残像を残すように伸びの良い滑らかな運動をもった香り方をするのだが、それと同時にプリズムのように各々の運動の軌道の交差点が粒状に明るみに出て香り立つ印象だった。このように、香りはマイペースに個々の運動を行っており、その残像の交点も常に変化し、同時にいくつかを認識出来る。だから微細な変化が面白く、また独特のスピードと浮遊感にも繋がっていると思った。

ラストは浮遊感はそのままに、バニラとサンダルウッドが浮遊していた花々の香りを抱きとめるように残る。このバニラとサンダルウッドはトップからミドルまではスズランやライラック、イランイランの郡と比べて沈着に、直線的かつなだらかに走っている印象で、甘い香りにしては浮遊感のあるこの香りにある種の安定感を作っているように感じられた。この時改めて、ムエットで感じた香ばしさは、ウッディではあるが普段それほど香ばしさを想起させないだろうサンダルウッドが他の香りと反射し合って生まれた一つの結果だったのだと改めて気付いた。

そう考えると、ボトルのペンキの飛び散り方は香りの構成にリンクしているように感じる。しかし、香り自体はこのように原色のカラフルさというよりは乳白色のピンク色のようなイメージを覚えた。

適度にポップなので、纏ったときは一日中街に繰り出したい香りだった。 外套としての香水にも適していると思った。

 

 

 

他の2本もムエットに吹きかけて、満足して店を後にした。

エスカレーター乗り場から、一階にある色とりどりに変わるツリーを象ったクリスマスのディスプレイが見えた。その近くは撮影にいそしむカップルで賑わっている。

それを眺めていたら、なんだかそのきらめきを邪魔してしまうような気がして、コートに一吹きした1/.2と一緒にどこに着くのか分からない上りのエスカレーターに乗り込んだ。

 

 

 

 

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