polar night bird

香りの記録

41.美味しい香り(ポップ 他)

 

友人に果物料理というテーマに合う香水を選ぶ機会があった。

なんでもイベントの香りの演出で使うらしかった。

 香りの演出も興味深いし他人にこうして香水を勧める機会は初めてで、張り切って情報を集めたのは言うまでもない。

 

しかし、フルーツの香水は星の数ほどあるが、「料理」となると意外に難しい。

フレッシュなフルーツ意外では、だいたいがスイーツ的な香りになり、バニラやクリームなどに頼ってしまいたくなる。

直球でグルマンを推すか、料理と繋がる由来や調合のコンセプトで勝負するか。

しかも、やはりある程度の価格帯以上ではないと香りに納得が行かなかった。

 

 

連日サイトや店で香水とにらみ合った結果、ネット等で安価に手に入りやすいものに焦点をあてた場合だと二つに絞る事ができた。所感は以下。

 

ステラ・マッカートニー

ポップ(POP)

→トップはピーチやベリー、クリームの入ったフルーティーかつクリーミーな香り立ち。一嗅ぎだけならファッション香水によく見られるフローラルウッディの濃厚な甘さなのだが、トマトリーフがそれらの奥に控え、むせ返るようなよく言えば若々しさに陥りがちな配合にどこか冷めたようなクールな視点を与えている。時間が経つにつれてフルーツに隠れていたチュベローズやトマトの青みのある香り、サンダルウッドが現れてくる。私の肌だとフルーツではなくチュベローズが強く香った。しかしチュベローズもクリームとトマトのおかげなのか従来の香りに感じるえぐみや官能的なイメージは感じない。ポップと言っても決して幼さやガーリーに終始しない現代的、都会的な香り。最近の甘い香水の中では特に面白い部類だと思った。

どちらかと言うとカジュアルな場面で、服のように纏いたい。

 

ラルチザン

プルミエ フィグエ エクストリーム(PREMIER FIGUIER EXTREME)

 →トップはフィグを感じさせる青みのあるグリーンの香り。そこに香り出すバニラやクリームとは違う、抑えられたコクのある滑らかな乳白色の甘さはアーモンドミルクやココナッツの香りで、ドライフルーツなどもその広がるというよりは落ち着く香りに貢献している。私の肌では早い段階からサンダルウッドのお香の様なパウダリー感が出て来て、最後までその粒子感が定着していた。

南国のバカンスのイメージらしいが、南国であっても、その日差しをのがれてやってきたイチジクのやや湿った木陰で、火照りを冷ましながらその木と果実を観察しているようなイメージが湧いた。

今回はエクストリームを試香したが、普通のプルミエフィグエの方があっさりと瑞々しく、トップからの甘さとパウダリー感が押さえられているのでココナッツよりもイチジクの実の青さが楽しめる。

エモーショナルというよりは香りの温度が低めで心地よさのある香りのため、夏でも冬でもよそ行きでもカジュアルでも使えそう。

 

 

どちらも香り立ちでは果実のフレッシュさとは少し違う。どちらも落ち着いてゆく香り方をしていて、果物は主要な香りではあるが、主役ではない。

私は料理のことは詳しくないが、これらの香水を吸い込んで、たくさんの素材が複雑に混ざり合った香りのレイヤーを辿りくぐり抜けた先にピーチやトマト、イチジクの香りを発見した時、食べ物を食べた時に似た満腹感を覚えた。

 

 

 

結果、今回はポップが採用された。(プルミエフィグエはネットの小分け販売があるのだが、時間がかかってしまいそうな為あきらめた。)

実はポップは前から気に入っていた香水だったので、購入時に半額負担し、半分貰い受けることになった。

そのポップのボトルを友人のいる開場に届け、香り立ちを見届けて役目を終えた後、持ってきたストールにポップを一吹きしてみた。

外は早くもキンモクセイの香りも終わり、風は香水がきれいに香る季節の香りを纏うようになっていた。

ストールを巻き直すと、何だか無性に甘いものが食べたくなって、何も考えずに下北沢でベリーの乗ったワッフルを食べた。

 

 

 

 

 

isetan.mistore.jp

 

 

www.artisanparfumeur.jp