polar night bird

香りの記録

2019-01-01から1年間の記事一覧

97.龍の根城《Winter Palace (Memo)》

引っ越した先は豊かな秋の香りに包まれている。 仕事帰りに歩いていると、イネ科の植物の垂れた頭のように降りて来る甘く乾燥した香りが丁度鼻のある位置を通り過ぎ、ある時は遠くの畑から野焼きの苦味のある香ばしい香りが風に乗って駅までやって来る。 春…

96.初めての調合《Silk Iris(パルファンサトリ)+メチオナール》

パルファンサトリのオープンアトリエがあると聞きいたので訪問させて頂いた。 パルファンサトリの香水は気に入っている香水がいくつかある。 また、最近私は香りの言語化と並行して実際に自分でも調香をしてみようと思いついており、作る側の視点からも学べ…

95.終わりの向こう側《Capri Forget Me Not(カルトゥージア)》

梅雨が明けてから一気に暑くなったが、それまでの寒冷な気候のおかげで今年はそれほど鼻が疲れておらず、仕事終わりに汗ばみながら銀座を歩き、試香する体力も残っている。 しかし一方で突如として暑くなった現状に付いて行けずに未だにどこか夢心地というか…

94.人工物の夏《Unsettled( Bruno Fazzolari)》

家の周りを走るのでも良かったのだが、せっかくの人生なので様々な場所を体験しておこうと思い、最寄りのジムに入会した。 明るく挨拶をよくするスタッフや、引き締まった身体の利用者たちが作り出す健康的な雰囲気は正直得意ではなかったが、目当てのプール…

93.ベースノート《Aenotus(Puredistance)》

仕事終わり、霞ヶ関から二重橋駅まで散歩をして帰る。 回り道をして銀座の高級クラブ街を通過し丸の内仲通りに出るのが毎度のルートだ。 銀座の繁華街では、これから仕事に向かう夜の女性たちの風呂上がりの蒸気感と粉っぽい化粧品と上質なムスクの香りが鼻…

92.微酔《PAS CE SOIR(bdk parfums )》

夕方、久々に新宿を訪れた。 相変わらずひどい混みようで、人観察に退屈しない所はやはり嫌いではなかった。 まだ日が明るいにも関わらず既に人が酒気を帯びている香りが漂っていて、さすが新宿だと嬉しくなったが、同時にこんな喧噪ごときが嬉しくなるほど…

91.緑の物語《MIDORI(Y25)》

Y25

最近住まいを東京から緑と水の多い場所に移した。都心まで苦なく出られて、静かで、東京と比べたらもちろん何も無い。今まで気に留まるのは自宅から歩いて20分程の所にある大きな沼と崖の下に見える薄気味悪いプレハブ小屋だけで、そのどこか荒涼とした景観…

90.畑とビルと風《Stercs(Orto Parisi)》

久々に渋谷に出た夜、正直気分は最低な日だったが、この機会を逃したらずっと行かないであろう六本木を訪れた。 一時期は毎週のようにグランドハイアットへ通った見慣れていたはずの六本木は、何やら妙によそよそしく、ビル風も重く冷たく、一辺倒に感じた。…

89.大人になれば分かるのかも《KISS ME INTENSE(Parfums de Nicolaï)》

年が明け、香り初めに銀座を訪れた。 去年は訳あって半年以上香りから離れていたため、店もろくに回れていなかった。 その間嗅覚の癖も若干変わってしまった様で、かつて愛した香りが楽しめなかったらどうしよう、とか、いつもの様に聞く事が出来なくなって…