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日々の糧—香り日記—

日々出会った香水について記してゆく日記。

55.パリはどんな香りなのか(カリーニャ 他)

セルジュ ルタンス ラルチザン

前回の記事から一ヶ月以上時間が過ぎてしまった。

手紙のように近況を記すと、転職活動をしつつ(これは全くおもしろくないから割愛する)最近はフランス人アーティストのライン友達が出来て、毎日何故か英語でラインをしている。

 

たまに彼から送られてくる写真が面白い。

パリで撮られたその写真は、本であったりギャラリーの展示風景だったりと同じiPhoneで取られたただの写真であるのに、写り込んだ空気が違うとでも言うのだろうか、どこか異世界での出来事のように写っているのだ。

 

ふと、セルジュ ルタンスとラルチザンを聞きたくなった。

それらは私の中で「いまいち得意ではないフランス香水」の位置付けであったが、今なら距離を詰められるのではないかと思えて、日曜日に銀座に急いだ。

 

まずはザ ギンザのルタンスを片っ端から試香した。

フランスの知性はまだ私の鼻には濃いと感じたが、不思議と普段の抵抗感が少ない。

今回はサマジェステラローズが印象に残った。

 

 

サマジェステラローズ(SA MAJESTE LA ROSE)

→トップは濃厚で鮮やかなバラの香りが広がるのだが、一般的な華やかで蜜のようなローズというよりは、序盤からややパウダリーさのあるウッド系の茶褐色の重厚感を伴って広がる。

トップがそのような香りであるためにこの先古典的な香り(悪く言えば古臭い)に変化してしまうのかと心配したものの杞憂に終わった。確かにクラシカルな粒子感は強まるものの、私の肌ではカモミールを始めとしたウッディフローラル系の香りが一緒に前に出始めた。このフローラルの部分も瑞々しさと甘さは控えめで、トップから続くローズの香りの調子を過剰にさせず、全体の華やかさは失わせない。また、ローズの石鹸のような清潔感を助長させていたように思う。まさに花弁が開くような変化の様子が面白く、久々に新鮮に思えた。

ミドル以降はそのまま石鹸のような香りへと移行してゆく。調べるとライチが入っているらしかったが、その種のフルーティーさは私の肌だとあまり感じなかった。

先で述べたように、真っ赤やピンクの鮮やかな薔薇というよりは、赤をワントーン落としたビロードのように高貴な薔薇を彷彿とさせる。さすが女王の薔薇。

どちらかと言うと夜に華やかな場所で香ったら美しいのではないかと思ったが、街中にも十分に溶け込める。不思議と女性らし過ぎない。

 

 続いて三越の香水売り場へ行った。ラルチザンはボトルデザインが変わってから初めての試香だった。

その中でカリーニャが印象に残った。なぜ今までこの香りに気づかなかったのだろう。と不思議に思った。

 

 

カリーニャ (CALIGNA)

→カリーニャとはプロヴァンス語で「求愛」という意味らしい。愛がテーマの香水は数あれど、この求愛はエモーショナルで濃厚な愛の交換ではない。

トップはフィグとアロマティックなグリーン、柑橘の爽やかで優しい香りから始まる。

トップから続く心地の良い癖の少ない甘酸っぱさは、ミドル以降も香りの種類を変えながら持続する。そこの甘さを担う香りも、薔薇の蕾を始めとしてやはりどれも初々しい青みを含んだ香りに思えた。

調べるとハートノートがジャスミンマーマレードやレンティスク、ベースにオークチップ、松葉、オリーブの木などのなかなかフルーティーな香水では見られない調香になっている。ベースに湿気の感じられない爽やかなウッドが揃っているためか、トップから最後まで肌に乗せた際の香りの質感は甘さを帯びながらも粘度は低くさらりとしていた。

しかしただあっさりした香りではない。ある程度の軽さを持ちつつシャープな輪郭と主張を持っているように思える。

香りの癖だけで考えると纏やすく現実的な香りだと感じたが、考えようによってはとてもロマンチックな香り。

 なぜこの香りに「求愛」と銘打ったのだろう。と考えながらこの香りを聞いていると、ふと懐かしい気持ちになるのだが、しかしそれが何なのか答えは出ずしまいだった。

 

 

まだ寒いというパリの、透き通った午後の空の下ではセルジュルタンスは、ラルチザンはどう香るのだろう。

2種類の香水を手首に乗せた私は銀座を歩きながらそればかり考えていた。

距離を詰められたかは分からないが、ルタンスもラルチザンも、今いる場所よりもう少し大気を見通せる場所が似合う気がしていた。 

 

気がついたら銀座の端に来ていた。

ここまで来ると海外の観光客も日本人もまばらになる。

ふと正気に帰ってiPhonを見ると、送られてきた彼のメッセージにはパリのどこかの橋から撮られた空の写真が添付されていた。

早朝なのか夕刻なのか分からないのに、不思議と懐かしい色をしていた。

 

 

彼のいるパリはどんな香りがするのだろう。

思っているだけでは分からずじまいだろうが、彼からの返事が少し待ち遠しい気持ちが少し悔しくて、それだけで毎日が少し楽しいのだった。

 

 

 

 

www.sergelutens.jp

 

www.artisanparfumeur.jp

54.チョコレートの濃い香り(ダークアンバー&ジンジャーリリー 他)

ジョー マローン

ブログの更新を行えないまま バレンタインデーが過ぎた。

今年は大好きなリトアニアのチョコレートナイーブをたくさん買おうと張り切ってサロン デュ ショコラを訪れたものの、そこで自分はチョコレートの香り、正確にはチョコレートと砂糖が混ざりあったあの出来たての甘くて温かい香りが実は苦手なのだと気付いてしまった。(食べることはできるのだが…)

 

チョコレートの甘い香りと溢れかえる人々の肌の香りをたくさん吸い込んでしまった後、鼻と胃と精神がすっかり疲れてしまい、チョコレートの香りとそのときの具合の悪さがトラウマのように頭に染み付いてしまっていた。

そのためしばらく香りから距離を置いていたのだった。

 

 

 

バレンタインデーを直前に控えた日曜日、友人と香水を見に新宿を訪れた。

彼女は数ある香りの中からどうやらローズの香りに惹かれたようで、一緒にローズの香りを聞いていたら少しだけ心が華やかになった。

 

しかしまだ、香り、殊に甘い香りに対して恐怖に似た気分が続いていた。

重く甘いバニラの香りに当たってしまったら、もう歩いて帰る気力がなくなるに違いない。そればり考えており、そのため、やはり手が伸びるのはクリーンやイッセイミヤケのような清潔系の香りばかりだった。

 

 

友人と別れた後、再び伊勢丹に戻ってジョー マローンを訪れた。

あの癖のない、瑞々しいガーデンのような香りがこの疲れから救いをもたらしてくれるのではないかと思ったからだった。

 

そこで出会った香りの所感は以下。

 

ダークアンバー&ジンジャーリリー (DARK AMBER&GINGER LILY)

トップは意外と爽やかで、ダークアンバーの濃厚になりがちな香りは強すぎず、変な甘さもなく低調で落ち着いた香りが持続した。ジンジャーリリーの香りなのか、名前のようにジンジャーエールのような瑞々しさと清涼感がある。

トップを過ぎると時間と共に甘さが強まり出す。サンダルウッド系の甘さだと思ったが、従来のそれよりは幾分か滑らかさの部分があっさりとしている。伽羅が入っていると店員さんが教えてくれた。その店員さんはこの香水を「日本の香り」と評していた。トップの奥に感じる研ぎ澄まされたダーク。涼しさはこの伽羅のためだろう。

ミドル以降は伽羅やパチュリ的な暗めの色が目立ちメンズ寄りの香りになるが、男女問わずに纏えると思う。

深い香りのタイプではあるが、ジンジャーリリーの 水気を伴う繊維感がトップの香りを広げてくれているので纏いやすい。

 

ブラックベリー&ベイ(BRACK BERRY &BAY)

→ベリー系というと、甘酸っぱい香りが時に濃すぎるように感じることがあるが、これに関しては全くそのような心配はなかった。トップのブラックベリーは瑞々しさと共に流れるように香り始める。ミヤシンマのように、清流の中に浮かぶ木の実にような透明感と立体感がある。

他にはフローラル(赤いスパイシーなものではなく、パンジーやすずらんのような、瑞々しい香りに合った優しい類のものだと感じる)グレープフルーツやシダー、サンダルウッドなども含まれてはいるが、そのどれもが変に主張がない。それはベイリーフを始めとしたグリーンの瑞々しさが、潤いのある水のような香りの中でそれらをまとめている印象がある。あくまで主役はブラックベリーで、グリーンの織りなす香りはベリーのフレッシュさが流れの中で散漫にならないよう支えるように香る。

時間の流れとともにやはりベリーが強まってくるが、トップのフレッシュさはしばらく続いたので嬉しかった。

 

 

ジョーマローンの香りは期待通り、ストレスなく香りのリハビリができた。

お陰で、チョコレートの甘い砂糖の香りへの嫌な思い出は少しずつ忘れてゆけば良いと思えてきたのだった。

 

 

その帰り道、ふと冷えた夜気の中に滑らかな花の香りがしたので顔を上げたら、桃の花が咲いていた。

もう春が来ている。

桃の花の蜜と花粉の混ざりあった甘い香りはいとも簡単に鼻の奥を通り過ぎていった。

 

 

 

 

ホーム | ジョー マローン ロンドン

 

 

 

53.まだ少し早い春(ディン ダン 他)

ロスマーク オリザ ルイ ルグラン

恵比寿で映画を観てそのまま中目黒まで散歩した後、日比谷線で銀座に向かった。

外は寒いが晴れてはいて、絶好の1人散歩日和だった。

全くと言っていいほど知らない街を一人で気怠く歩いていると、世界から半分隔絶された夢の世界を歩いているようで、それはそれで気分が踊る。

ふと春の気分になってみようと思い立った。

 

恵比寿でも中目黒でも今年の春の香りものを探していたが、セレクトショップではイソップが目立つばかりで、香水はあまり収穫がなかった。

(イソップが嫌いなわけではない。)

 

銀座は東急プラザに行った。

東急プラザ銀座は雑貨屋の多くが各々の店の雰囲気に合った、割と珍しい香りものを置いているので楽しい。

特にエルムタージュ ドゥーに置いてある香水のセレクトは特に私の気い入りで、店員さんの応対も優しいので、今回も香りを求めて棚に向かった。

 

前々から気になっていたロスマークをまず試してみた。

ロスマークはブルターニュ地方の小さな村の名前が由来で、その町が海辺に位置することから海を彷彿とさせる香りが多い。ボトルのデザインも海のイメージを喚起させる。

その中で、ディンダンアエルマが印象に残った。

 

 

ディン ダン (DIN-DAN)

→ブレイス語で「やぶ」という意味。

プッシュした直後はピーチとレモンがともに香り、ややフルーティーなイメージだったが、みるみるレモンが台頭する。レモンは酸味が強く甘さは控えめ。そこにヴァーベナ、ミントの爽快感のあるグリーンがレモンの輪郭を強調させるような形で香るため、直線を描くようなきりりと鋭利な香り立ちになっている。

最近ではレモンが主体の柑橘というとコロン的な控えめな香りが多いように感じるが、これは珍しくレモンの青さまでも強めの主張で楽しめる。ミドル以降はピーチブロッサムはフルーティーさではなくあくまで花として控えめに混ざり合い、他の湿潤な香りの中で程よくパウダリーに香った。ラストまでこの調子は続くが、残り香はレモンの奥にミントの名残があり、レモンの香りの石鹸に少し似ている。

ボトルのラベルも幼少期の洗面所を彷彿とさせる。なぜ藪なのだろう。

 

 

 

アエル(AEL-MAT)

→ブレイス語で「守護神」という意味。

まずボトルのラベルが気に入った。青を基調とした遠くに帆船が見える絵柄はなんとも不思議なノスタルジーがある。香りは、店員さんが海につけて行きたいマリンの香りと形容してくれた通り、よく聞くとマリン系の香りなのだが、一般的なバニラの強いマリンではない。

トップはマリンが入っていると気づかないほどの爽やかさと瑞々しさで、グリーン系に近い気がした。わたしの肌ではジャスミンカモミールのまろやかさを帯びたやや鼻に残る緑の香り、その奥にさりげなく甘いピーチのような果実の香りとムスクが透明感を持って香った。ミドル以降から漸くマリンらしい仄かな塩味とジャスミンの滑らかさが現れ始めるが、バニラ系の濃い香りは感じないため、あくまでハーブの漂う鼻を爽やかに通り抜ける香りが主体だった。ラストはトップと比べれば甘みが強まりパウダリーになった。最後まで残るムスクは清潔さがあるので、その香りは変に肌に残らない。

 暑い砂浜と太陽と海というより水底の砂利に空のブルーが揺れ動く初夏の海をイメージした。ボトルのイメージ通り、香りにも懐かしさが混ざった可愛いらしさがある。

 

 

山はマドエレン、海はロスマークとフランス奥地で作られる限定生産香水が揃う中、オリザルイルグランを置いてある所もやはり渋い。

 

オリザからはもう少し先の春の訪れにふさわしい香りを勧めてもらった。

 

 

デジャ ル プランタン(DÉJÀ LE PRINTEMPS)

→フィグリーフの香りの香水。トップはシダーウッドの落ち着いた香りが香り立ち、その中に、フィグリーフやクローバーなどのふわりとした軽さのある、優しい緑の香りと花の香り(ミュゲやデイジーが入っている)が分かる。ベチバーやモス、ガルバナムも入っており、その土を感じさせる透き通った香りがシダーの乾いた香りと混ざり合い、ウッド部分を入れ物のようにはっきりとした輪郭にさせている。それは古い本を開いたときの様な感覚にさせる。

先述した花のノートは優しくさりげないものを配置している他には、ミントなどの爽快系のグリーンも含まれており、それが先述した花々の部分も緑の一部として引き立たせているように感じた。残念ながらオレンジブロッサムの香りは私の肌では香らなかった。ラストはやはりウッドの香りが残った。その中に僅かに残る甘い香りは、風のなかに一瞬感じた春の気配を探すように聞く楽しみがあった。

他のオリザの香水と同じく、春の華やかさも感じながら変な派手さはなく、昔出会った懐かしい春を思い出すようなノスタルジックな香り。

ユニセックス。女性的でも男性的でもないと思う。

 

 

 

ディン ダンアエルマとデジャ ル プランタン、どれも春夏にふさわしい香りで、全て欲しくなり、次はここで香水を買おうと密かに心に決めた。

 

 

 

東急プラザを出たら陽光がいつもより少し暖かく、吹いた風にデジャヴを感じたりした。

 

 

 

Heroomtage

 

※ロスマークはトゥモローランドでも扱っているらしい。

LIFE STYLE GOODS | TOMORROWLAND

 

オリザ ルイ ルグラン | 伊勢丹オンラインストア

52.表参道を散歩(green,green,green and…green)

ミレー エ ベルトー

買い物ついでに表参道に寄った。

特に用事はなかったが、久々に気分転換に歩いてみようと思った。

 

表参道というと、まずはスパイラルマートの香水売り場に寄る。

そろそろ今年の春夏用の香水をと探してみたところ、ミレー エ ベルトーに目が留まった。

その中でも、green,green,green and…green #3(グリーン、グリーン、グリーン アンド…グリーンと読むのだろうか)が印象的だった。

所感は以下。

 

グリーン、グリーン、グリーン アンド…グリーン#3

(green,green,green and…green#3)

→グリーンウッド系の香り。吹きかけた直後はシダー系のやや乾いた穏やかで濁りの無いウッドの香りとヴァーベナを主にした新鮮なハーブの香りが混ざり合い、瑞々しく朝の空気感を感じる。さらに聞いてゆくと、青々した香りは落ち着き(しかしラストまでしっかり存在感はある)コリアンダーやローレルのスパイシーな香りを感じ始める。

パチュリ系の苦味を感じたのだが、この部分が醸し出しているのだろうか。しかしパウダリー過ぎず透明感を残したウッドがしっかりとベースに流れているため、最後までスパイシー過ぎず、あくまで甘さ控えめのビターなアロマティックグリーンの香り立ちをした。

名前の通り、連なるグリーンの顔は様々だということを改めて感じる香り。まだ暖かくなり始めの春先に出会った緑の香りを一つ一つ観察しながら散歩している気分になる。気分転換と同時にリラックスできた。

 

 

 

ベルトーのグリーンはフランス的ではあるものの、それと同じくらいインドを思わせるウッド系の香料を多用している。香りはヨーロピアンガーデンの露を乗せた繊細な草花というよりも散歩した先で周囲の空気を包むように生えている大きめの草木を思わせる。

軽薄なロハス思想には陥りたくはないが、 自然に囲まれた場所で朝日を浴びながらヨガをしたらベルトーの香りのような気分になるのかもしれない。

時間をたっぷりと使って緑とともに行う丁寧な呼吸は、何という贅沢なのだろう。

 

 

などと考えながら無意識に足を進めていたら、歩いていた日陰がちな通りにはLOHAS STREETと書いてあった。

外気は春にはほど遠かったが、歩いていたからか不思議と体に冷えは回っていなかった。

 

 

 

 

store.spiral.co.jp

 

 

 

 

 

51.歌舞伎町(キャンディ キス )

プラダ

昨日はローグワンを観ようと思い立ち、新宿に向かった。

ローグワンは前に見たことがあったのだが、先々日にとあるきつい出来事があったので大画面で純粋にワクワク出来る映画を観て気分を平穏に戻したかったのだ。

 

 

という経緯から新宿ピカデリーを訪れたら、夜まで席はほぼ満員だった。

常に混雑しているので仕方がないと思いつつも、残された歌舞伎町のTOHOシネマズ新宿という手段に移ることが出来ずにいた。

 昼間とはいえ、歌舞伎町エリアに行くのはある程度の気力が要る。

という事で、景気付けに行きずりの香水ショップに入った。

 

店員同士の世間話が盛り上がる中、定価より安値を付けられた色とりどりのファッション香水が壁に積まれた店内は薄暗い。ボトルがうっすらと自らが纏う原色の色を輝かせる様は、伊勢丹のカフェ デ パルファムとは別世界に思えた。

 

そこで割合発売日が新しいプラダ キャンディ キスを見つけた。キャンディシリーズへの先入観から試香をためらっていたものだった。

所感は以下。

 

プラダ キャンディ キス(PRADA CANDY KISS)

→ キャンディシリーズはグルマン系が多いイメージがあったが、これはトップはオレンジブロッサムが香る。生花寄りの香りではなく、バニラとオレンジのような香りの中にジャスミンに似た白い花系の癖を感じる事が出来るので識別出来るという類。 ムスクが肌にしっかりと定着させてくれ、瑞々しさも程よく芯を持って直線的に香る印象を受けた。

香りは時を経るに従ってバニラが強まるものの、風に香りがたなびいた時や仄かに自分の肌から感じる時はオレンジブロッサムが主体に香り立ち、案外落ち着いた雰囲気で纏いやすかった。残り香はバニラ。嫌な感じでべたつかず、優しいベビーパウダーのような印象を受けるのはホワイトコットンが含まれているからだろうか。

合成香料の力強さと安定感を久々に感じ、最近天然香料至上主義に寄っていたかもしれないと浅はかさを反省した。

 

 

 

最近はファッションブランド系の香水を試香するとすぐに疲れてしまうようになったので、 キャンディ キスのみ連れて店を出た。

 

やっと辿り着いたTOHOシネマズ新宿でも、ローグワンはほぼ満席だったり上映時間が合わないやらで、結局観ることが出来なかった。

とんだ無駄足になってしまったのだった。

 

 

昼間でも歌舞伎町は夜の匂いがした。これから日暮れに向けて更に強まるのだろう。

この街ではそこら辺の天然香料ばかりの繊細な香りなどは敵うはずもなく、消し飛んでしまうに違いない。

しかし、猥雑で混沌とした街角で、キャンディキスは尚もはっきりとブレずに綺麗に香った。

 

いつもならうんざりとした気持ちで疲労に足を引きずっていたであろう帰路、今日は張り切って新しいネイルカラーと服を沢山買い込んだ。

 

 

 

PRADA - OFFICIAL WEBSITE - JA

 

PRADA / CANDY KISS | プラダ / キャンディ キス | INTERMODE KAWABE -フレグランス・香水-

 

 

50.香りはじめ(フアン マヌエル 他)

フェギア1833

1月3日にフェギア1833の初売りに向かった。

詰め合わせが売られると聞いて、貧乏な私はこの機会を逃せなかったし、やはり一年の始まりの香りはフェギアで行いたかった。

 

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2万円の詰め合わせを買ったら

アグア デ ガーデニアのオーデパルファム

フアン マヌエルのキャンドル(小)

フィギィエールのキャンドル(大)

パタゴニア ウッドボックス

に、まだ未発売の新作

ラベリント、ムスカラ ヴェティヴェリア、ムスカラ フェロ ジェイ

の3種の小分けテスター

の5点が入っていた。

 

アグア デ ガーデニア は、前に所感を書いている。

26.転換期(ポメロ パラディ 他) - 日々の糧—香り日記—

キノコの香りが入っている纏いやすくもユニークな香りの香水で、ここで手に入れられて嬉しさこの上ない。

 

フアンマヌエル やフィギィエールはキャンドルは初めてだった。

所感は以下。

 

フアン マヌエル(キャンドル) (juan manuel)

→パルファムよりもローズの香りはすっきりと鼻に抜ける様な清潔感が強いような気がする。2種類のバラの香りが混ぜられており、そこにピンクペッパーという調香のために、華やかな蜜っぽいローズではなく甘さは控えめ。瑞々しさは丁度ローズの花弁を触った時と似ている。温度の低い引き締まったスパイシーさがあり、香り立ちは真っ直ぐに筋が通っている。石鹸の様に香るのでリフレッシュが出来た。

綺麗にした室内に焚いて風呂上がりに香りを楽しんでみたくなった。

 

 

フィギィエール(キャンドル) (fueguier)

→パルファムと同じくイチジクの香りがリアル。イチジクを主軸に他にはプチグレンとムスクが配合されており、酸味は無くグリーン系の優しいパウダリー感と深みが付与されている。そのためイチジクの香り立ちはどちらかというと柔らかな実の部分というよりはフィグリーフ的な、葉や幹を含めた青さを感じた。

爽やかさがあり、青空の下心地良い風と共に感じるイチジクの木の香りのイメージがある。昼間焚いてもリラックス出来る香り。

 

 

 

 

新作のテスター3本は、フェギアらしいスモーキーな香りだった。まずはラベリント。

 

ラベリント(Laberinto)
→ウッド系の香り。トップはタバコやパチュリ系の甘さの無い乾いたコクと渋味。だんだんと深みが増してくるにつれて、石のような硬質な香りが混ざってくる。この香りがベチバーだろうか。ベチバーを確認すると、この香りは序盤のコクと代わる様に強まって行き、最後まで続いた。サンダルウッドが入っているため、苦味はあってもギスギスした香りではなく、適度な透明感を持ちながら滑らかなタバコの煙の様に肌に染み込む。茶色味がかった緑色をイメージできた。メンズ寄りの香水。

【追記】ラベリントはボルヘスの詩集「迷宮(ラベリント)」から取っていた。硬質な香りは迷宮の果てしない石組みなのか。

 

 

ムスカラはmuskaraという新たなカテゴリーの、化学的で実験的なアプローチの香水のようだった。

所感は以下。

 

ムスカラ ヴェティヴェリア (Muskara Vetiveria)

→深く苦味のあるグリーンの香りはスモーキーでいながら奥に垣間見える芯が直線的に通っており、徐々にドライフルーツ的な乾燥感のある香りが現れる。トップにジンの香りを感じたが、どこか漢方の様な癖のある香りが気になり、何だろうかと考えていたら、リコリスの香りであった。その香りは暫く続いたが、いつしか後ろから追尾していたベチバーの土気のある香りが台頭し始める。ラストはほぼ、甘さの無いベチバーに落ち着いた。

 

 

ムスカラ フェロ ジェイ(Muskara Phero J )

→とても複雑。フェギアのショコアトルにやや似たココアの様なコクとパサついた香ばしい甘さを奥に感じる。そう思うと表面のバニラの滑らかさに気を取られて細部が分からなくなる。ラストに残されるムスクの香りはほのかに優しく爽やかだった。

どうやらダウンのフォーミュラXのように人が持つ香りとの相互作用により香り方が変わる様なタイプの香水だと書いてあったが、どうなのだろう。

 

 

新作は春に発売されるらしい。

謎が多いので、店頭で再び試香する機会が待ち遠しい。

 

と、このような充実した香りはじめとなった。

これからは、ムスカラシリーズのような人が持つパーソナルな香りに焦点を当てた香水が注目されて行くのだろうか。

 

新年から幸先の良いスタートを切った気はするが、今年もきっと想定外の香りとの出会いと学びが沢山あるはずだと期待している。

 

 

 

49.大晦日の香りおさめ(アーエル 他)

アンジェラ チャンパーニャ

去年の大晦日は帝国ホテルプラザへ向かった。

 

前日の香水おさめに手応えを感じることが出来ず、これを機に前々から気になっていた帝国ホテルプラザへ行ってみようと思った。

プラザ内4階の、敷き詰められた暖色の絨毯を暫く進んだ先の B.d.Oを訪れた。

そこで扱っている、 去年の夏に日本に初上陸したイタリアのニッチフレグランス、アンジェラ チャンパーニャは目的の1つだった。

 

色の抑えられたシックなボトルは、白を基調にした店内で良く目立っていたのですぐに分かった。

 何でもデザインはゴシック建築や礼拝堂からイメージされているらしい。それだけで興味を唆られる。

特に記憶に残った香水の所感は以下。

 

アーエル(AER)

→夕霧という意味。オークモス的な湿度のある苔味の強いグリーンと石畳のような冷たくスモーキーな香りで始まる。甘さは無く、グリーン系と言えどもフレッシュな香りではない。グレーがかった深い緑色とでも言おうか、名前の通り霧のような、植物の香りを内に含んだ細かい水分の粒が緩やかに近づいて来る様な香り方をする。時間が経つに従って、まるで霧の中で何かを探っている様にグリーンの仄かな甘味を含んだ香りの細やかな部分が見えて来る。調べるとグレープフルーツやジュニパーベリーの甘さで、グリーンの青味の奥に佇む様にさり気ない。

ラスト辺りになると特にミントの青々しい香りが残り、そのしっとりとした湿気が夕霧の後の夜の静けさを彷彿とさせる。

傾向的にはオリザのレリーク ダ アムールやアエデス デ ヴェヌスタスのイリスナザレナと似ているが、それらより低調に終始静謐な禁欲的なテンションで香る。

個人的にかなり好みの香り。

 

 

 

ロザリウム(ROSARIUM)
ラテン語で教会のバラ窓を意味する。柑橘系が入っているのかと思う程すっきりと清潔感があり癖がない。調べるとタバコの花、キャロットシード、セロリシード、ジュニパーベリーなどが入っている。それらがすべて混ざり合う様に1つのかおりになっており、薬草として使われている花の香りを彷彿とさせる。引き締まっているも優しい鼻当たりで頭1つ上の清々しい空気を吸っている気分になり気持ちが晴れる。瑞々しいながらこれもアーエルの様な霧の様な粒子感をもって香った。
時が経つにつれて、トップのクリアで滝の飛沫のような香りにバニラ、サンダルウッドやインセンスの白さのある滑らかな質感が現れてくる。それに伴い、聖堂の中に香炉の煙を纏った香りが満ちる様に甘さが増して行く。意外な移り変わりに思えたが、序盤の香りは聖水の香りなのだろうかと考えたらロマンがあった。

 

 

 

 

他にも

ジャスミンクローブの華やかな「アトリア」、

ナツメグゼラニウムのさっぱりとした「デュカーリス」、

マリンにやや石の涼やかさのある「カーナト」、

複雑で古代のオイルの様に濃厚な「リクオ」、

ウッドとペッパーがドライな心地よさを作る「ノックス」

があった。

そのどれもがラテン語で名付けられており、中世時代のアトリの街のストーリーから着想されている。

アーエルの所感で書いた通り、どの香りも霧や水蒸気のような細かい水の粒のような香り方をすると思った。情感豊かなタイプではなく淡々と香って行く。そして霧に包まれるように、いつの間にか中世の記憶が囲い込んでいる。

 

 

 

 

 B.d.Oには他にも出会った事のない珍しい香水が沢山並んでおり、ヨッシュやドルセー、エバリオ トスカーノなど、あまりお目にかかれないものにも出会えた。

香りおさめには最高の充実した場所だった。

 

静かな店内に備わったソファに身を沈め、早速所感をノートに纏めた。

行きの道で通った飲み屋街は年末だからか人も居らず生命の営みの香りは息を潜め、ほこりと排気ガスの香りがしていた。一方プラザ内は何やらパウダリーで高級感のある香りが漂っていたが、その外以上に人気が無かった。

 

年末はやはり大きな何かが終わる様な仄かな異世界感が付いて回る。

夢か現実か、そのどちらにも当てはまりそうな帝国ホテルの灯りの下、時を忘れて1人中世の遠い物語に浸るのは、そこそこ贅沢な年末の気がした。

 

 

 

 

アンジェラ・チャンパーニャ || 株式会社 大同